「テアトロ」2002年3月号より
佐藤康平
 
 まず、これぞ2001年のナンバーワン芝居創りといったら、ストアハウスカンパニーが年も押し迫って本拠地で打った『Territory』ではあるまいか。これに尽きる。台詞が一言もない木村真悟の構成・演出『箱』『縄』を見ているからこの舞台創りは、珍しいものではない、にしても大いなるショックを受けた。
 現今の演劇創造すべてが凝縮して現れた舞台と見てよいだろう。今舞台を体覗、意識し表現体を創り上げるとしたら、これしかない、究極の舞台創りと考えていい。先にも述べたように、この驚くべき舞台に台詞はない。台詞がなくなった分だけ、舞台上に積み重なった古着や古帽子の山があるべき意味を主張し、ものを言ってくる。だまってその主張なりに身にまとう俳優の裸汗にまみれた肉体が、勢力圏を持ち始める。しかし占有行動に疲れ一旦身につけた古着を剥ぎ取っていく。後に残した、透き通った人間大のビニールの袋に、裸で入った役者は汗にまみれ体液を流す。女優の裸像の突かれる美しさ。裸形に驚いているのではない、今年はいろんな舞台でお目にかかったが、ともかくここで推して悔いない名舞台だった。