今作はゴミの山に遭遇した「Territory」
『小劇場 情況』より
江森盛夫 「噂の真相」2002年7月号
 
ストアハウスカンパニー公演「Territory」(構成・演出=木村真悟)。
前作「縄」で縄と戦った5人の旅人は今回は「ゴミの山」に遭遇する。
S・ライヒのミニマル・ミュージックが彼らの走行を促し、ジグザグな軌跡を反復しながらゴミの山に不可避的に直面させる。
彼らはゴミ・古着ともつれあった果てに、ビニール袋を探し出し衣服を脱いでもぐり込む。
ビニールの袋にくるまって彼らは立ち上がる。
袋の中で汗に浸潤された裸体が不透明に見え、裸体とビニールの質感との不協和が
我々の現下の現実との不快な摩擦を強要する生活を呼び起こす。
やがて衣を破り、衣服を取り戻し、ついには倒れてしまうのだが、その全過程のパフォーマンスは力感に満ち、
挑むような、途方に暮れたような彼らの顔つきが素晴らしい。
 
この舞台は死と再生の凡庸な物語に回収されるのではなく、真の内実何故人間が生れてきて、ここにいるのかという生の不条理の顕現、フィジカルな彷徨の果てにメタフィジカルな地点に到達した瞬間を鮮やかに体感させたことなのだ。